原子力という「色眼鏡」

ウィーンで仕事をし始めて1年5か月が経った。直前まで大学院にいたので,日本的な言い方で言えば「社会人1年目」をウィーンで始めて,2年目の凡そ半分まで来たところ。

大学院以来,原子力発電や核不拡散,原子力安全(福島第一原発事故後)といったテーマに取り組んできたが,ウィーンに来てからは,原子力放射線技術の発電以外の利用,発展途上国への技術協力といった,また毛色の違った仕事に取り組んでいる。

専門性としては,プロフェッショナル・キャリアの序盤で早くも迷走しはじめた感もあるが,そもそも専門性というのは,限られた範囲を詳細に拡大する「顕微鏡」でありながら,逆から覗けば,目に入るものを特定のコントラストに調節して,ある部分をクリアに,或いはビビッドに見ることのできる「色眼鏡」でもあるというのが持論なので,その意味では,原子力という「色眼鏡」の使い方の幅が広がっているので,むしろ良しとすべきだろうと思っている。

まぁ一般の人から見れば「原子力」をやっていることに変わりはなく,結局のところ自分の領域をどう定義するか次第なわけなので,自分自身を核不拡散屋などと定義するのはやめて,原子力(nuclear)や放射線(radiation)と名のつくものは全て扱っていこうと思う。

・・最近ふとそんな心境に至ったこともあり,原子力という「色眼鏡」で見た世界の様子というものを書いていきたい。